月案の書き方|保育所保育指針の条文から文例・主任チェックの視点まで(2026年版)
この記事は2026年7月時点の情報をもとにしています。
真っ白な月案の様式を前に、今月は何を書けばいいのか手が止まる。そんな夜を、私も新人のころに何度も過ごしました。
私は今、園で主任をしています。もう20年近く保育の現場にいますが、初めて月案を任された年のことは今でも覚えています。前の月の月案をほとんどそのまま写して提出したら、当時の主任にこう言われました。「これ、去年のクラスの子の姿でしょう。この子たちの姿はどこにあるの」。恥ずかしさで顔が熱くなったのを覚えています。
その悩み方、よくわかります。月案は「様式を埋める作業」ではなく「前月の姿から今月の見通しを立てる作業」だと考え方が変わると、手の止まる時間が減っていきます。この記事では、保育所保育指針の条文を出典つきで確認しながら、月案の構成要素、ねらい・養護・教育・反省それぞれの文例、そして主任が実際にどこを見ているかまで、順番に整理します。
月案(月間指導計画)とは何か?年間計画・週案・日案とどう違う?
月案とは、1か月単位で保育のねらいと内容を具体化した指導計画のことです。保育所保育指針では、指導計画を長期と短期の2種類に分けて位置づけています。
ア 保育所は、全体的な計画に基づき、具体的な保育が適切に展開されるよう、子どもの生活や発達を見通した長期的な指導計画と、それに関連しながら、より具体的な子どもの日々の生活に即した短期的な指導計画を作成しなければならない。
(出典:厚生労働省「保育所保育指針」)
年間計画が「長期的な指導計画」、週案・日案が「短期的な指導計画」にあたり、月案はその間をつなぐ計画です。年間の見通しを月単位に具体化し、そこからさらに週・日の計画へと降りていく。月案だけを単独で考えると迷いますが、この位置づけを頭に置くだけで、何を書けばいいかの輪郭がはっきりします。
なぜ「去年のコピペ月案」は主任チェックで止まるのか?
私が主任として月案を確認するとき、実は最初に文章の上手い下手は見ていません。見ているのは、前月の子どもの姿と今月のねらいが、つながっているかどうかです。
私が実際に差し戻す理由は、だいたいこの3パターンに集約されます。
- ねらいが前月の姿から生まれていない:前月の姿の欄に書いてあることと、ねらいの欄に書いてあることが無関係。去年のクラスの月案を写すと、まずここでずれます。
- 養護と教育が逆になっている:「情緒の安定」の欄に、健康や言葉といった教育の内容が書かれている。養護は生命の保持と情緒の安定、教育は5領域という区分けが、書いているうちに混ざってしまう。
- 個別の配慮が抜けている:クラス全体の姿だけで完結していて、配慮が必要な子への個別の視点が一言もない。
その通りです。土台にすることは悪くありません。でも、前月の姿とねらいの対応関係だけは、その月・そのクラスの子を見て書き直す必要があります。ここは、あくまで私の園での経験に基づく実感であり、全国共通のチェック基準として決まっているわけではありません。園によって重視する観点は異なります。
月案の8つの構成要素
月案の様式は園によって多少違いますが、書く内容は大きく次の8つに整理できます。それぞれの詳しい書き方と文例は、このあとの専用の見出しで扱います。
前月の子どもの姿
前月に実際に見られた子どもの様子。この欄が、今月のねらいの出発点になります。
ねらい
今月、育ってほしい方向を示す欄。書き方の3ステップと文例は後述の専用見出しで扱います。
養護(生命の保持・情緒の安定)
「月案 養護とは」で調べられることが多い欄です。生命の保持と情緒の安定の2つの視点で書きます。教育との違いは後述の見出しで扱います。
教育(健康・人間関係・環境・言葉・表現の5領域)
「月案 教育」で検索される欄です。健康・人間関係・環境・言葉・表現の5領域を視点として書きます。
環境構成・保育者の配慮
ねらいを達成するために、どんな環境を用意し、保育者がどう関わるかを書く欄です。
職員間の連携
特に長時間保育では、朝番・遅番など複数の保育者が同じねらいを共有して関わる必要があります。役割分担の視点をここに書きます。
家庭との連携・保護者支援
家庭への配慮や協力依頼を書く欄です。日々の連絡帳の書き方とも重なる部分があり、家庭に伝わる言葉を選ぶ視点は共通しています。
反省・自己評価
「月案 反省」「月案 自己評価」で調べられる欄です。書き方と文例は後述の専用見出しで扱います。
「ねらい」の書き方3ステップとそのまま使える文例2本
ねらいは、次の3ステップで組み立てると書きやすくなります。
- 前月の姿を確認する:前月、実際にどんな姿が見られたか。
- 育ってほしい方向を決める:その姿から、今月はどこへ育ってほしいか。
- 動詞で具体化する:「〜する」「〜しようとする」など、行動として書く。
3歳以上児のねらいでは、次の視点が土台になります。
(イ) 3歳以上児については、個の成長と、子ども相互の関係や協同的な活動が促されるよう配慮すること。
(出典:厚生労働省「保育所保育指針」)
文例(1歳児):
身の回りのことを自分でしようとする気持ちを大切にしながら、保育者に見守られる安心感の中で、簡単な身支度に取り組もうとする。
文例(4歳児):
友達と役割を分担しながら遊びを進める中で、自分の思いを伝えつつ、相手の思いにも気づき、折り合いをつけようとする。
4歳児の文例は「個の成長」と「協同的な活動」の両方を意識して組み立てています。年齢によって、個の育ちを主に見るか、友達との関係を主に見るかの重心が変わってきます。
「養護」の書き方と文例2本(生命の保持/情緒の安定)
養護と教育を混同しがちですが、視点は次のように分かれています。
| 区分 | 視点 |
|---|---|
| 生命の保持 | 健康・安全・生理的欲求が満たされること |
| 情緒の安定 | 安心して自分を出せること、心のよりどころがあること |
文例(生命の保持):
気温の変化に応じて衣服の調整や水分補給を促し、一人一人の体調の変化にいち早く気づけるようにする。
文例(情緒の安定):
甘えたい気持ちを受け止め、保育者との関わりの中で安心して過ごせる時間を大切にする。
教育の欄との違いは、主語が「保育者が何をするか」に寄る点です。教育の欄は「子どもがどう育つか」を書きますが、養護の欄は「保育者がどう支えるか」に重心があります。
「教育」5領域の文例2本
教育は5領域を視点として使います。検索の多い「健康」「人間関係」を軸に文例を紹介します。
| 領域 | 視点 |
|---|---|
| 健康 | 心と体の健康、生活に必要な習慣 |
| 人間関係 | 身近な人との関わり、自立や協同 |
| 環境 | 身近な環境への好奇心 |
| 言葉 | 伝え合う力、聞く・話す力 |
| 表現 | 感じたことを表現する力 |
文例(健康):
戸外で体を動かす遊びを通して、走る・跳ぶなどの基本的な動きを楽しみながら経験する。
文例(人間関係):
友達と一緒に活動する楽しさを味わいながら、自分の気持ちを言葉で伝えようとする。
3歳未満児と3歳以上児で月案の書き方はどう変わる?
年齢によって、月案で重視する視点そのものが変わります。保育所保育指針には、次のような留意事項が示されています。
(ア) 3歳未満児については、一人一人の子どもの生育歴、心身の発達、活動の実態等に即して、個別的な計画を作成すること。
(出典:厚生労働省「保育所保育指針」)
(イ) 3歳以上児については、個の成長と、子ども相互の関係や協同的な活動が促されるよう配慮すること。
(出典:厚生労働省「保育所保育指針」)
つまり、3歳未満児の月案は「その子一人の生育歴や発達の実態」を出発点にする個別月案の発想が土台にあり、3歳以上児の月案は「個の育ち」に加えて「友達との協同」の視点が加わります。同じ様式でも、書くときに見ている対象の広さが違う、と考えると整理しやすくなります。
「前月の子どもの姿」から今月のねらいへのつなげ方(月案のPDCA)
ねらいが前月の姿とつながらない一番の原因は、そもそも前月の記録を見直す時間が確保されていないことです。指針には、記録と見直しについてこう示されています。
エ 保育士等は、子どもの実態や子どもを取り巻く状況の変化などに即して保育の過程を記録するとともに、これらを踏まえ、指導計画に基づく保育の内容の見直しを行い、改善を図ること。
(出典:厚生労働省「保育所保育指針」)
私の園では、月末のクラス会議で「今月、印象に残った姿」を担任同士で出し合う時間を設けています。この一言メモが、そのまま前月の姿の欄と、翌月のねらいの土台になります。誰が・いつ・どの会議体で見直すかは園によって違いますが、記録を見返す時間を先に決めておくことが、月案を前月とつなげる一番の近道です。
「反省・自己評価」の書き方と文例2本
反省欄は、達成できたことと、課題が残ったことの両方を書き、翌月のねらいにつなげます。
文例(達成できた反省):
戸外遊びを通して、体を動かす楽しさを感じる姿が多く見られた。天候に合わせて活動を柔軟に切り替えられたことも良かった。
文例(課題が残った反省→翌月への引き継ぎ):
友達との関わりの中でトラブルが増えた時期があり、保育者の仲立ちが必要な場面が多かった。翌月は、自分たちで気持ちを伝え合う経験を意識的に増やしたい。
反省欄で見つかった課題は、そのまま翌月のねらいの1文目に生かせます。反省を書きっぱなしにせず、翌月の様式を開いたときに読み返す。この往復が、月案のPDCAです。
0歳児・1歳児・2歳児・幼児(3〜5歳児)で月案はどう変わる?
年齢によって、月案で重心を置く場所が変わります。
- 0歳児:生活リズムと、特定の保育者との愛着関係が中心になります。
- 1歳児:歩行の獲得や探索の広がりに合わせた環境構成が中心になります。
- 2歳児:自我の育ちや「自分でやりたい」という気持ちの支え方が中心になります。
- 幼児(3〜5歳児):個の育ちに加えて、友達との協同性が中心になります。
特に低年齢児の月案では、睡眠のような生活面への配慮も欠かせません。指針には次のように示されています。
オ 午睡は生活のリズムを構成する重要な要素であり、安心して眠ることのできる安全な睡眠環境を確保するとともに、在園時間が異なることや、睡眠時間は子どもの発達の状況や個人によって差があることから、一律とならないよう配慮すること。
(出典:厚生労働省「保育所保育指針」)
月齢や在園時間によって午睡のタイミングが違う子がいることを、環境構成の欄に一言入れておくだけでも、養護の視点がぐっと具体的になります。より詳しい月別の文例は、年齢ごとの記事で扱う予定です。
主任・園長は月案のどこを見ている?現役主任のチェックリスト
ここからは、私が主任として実際に月案を確認するときに見ている観点です。あくまで私の園での経験に基づくもので、全国共通の基準ではありません。
- 前月の姿と、今月のねらいがつながっているか
- ねらいと、養護・教育の内容が対応しているか
- 養護と教育の欄が入れ替わっていないか
- 配慮が必要な子への個別の視点が入っているか
誤字脱字より先に、この4点を見ています。逆に言えば、ここが通っていれば細かい言い回しで差し戻すことはありません。
月案で一番伝わるのは、きれいな言葉遣いではなく、前月の姿を実際に見て書いたという事実です。
月案は年間計画・週案・日案・要録とどうつながる?
月案は、単独で完結する書類ではありません。年間の見通しから降りてきた中位の計画であり、そこからさらに週案・日案という日々の計画に具体化されていきます。そして、月ごとに積み重ねた記録は、年度末には保育所児童保育要録を書くときの材料にもなります。月案だけを孤立させて書くのではなく、この体系の中の1か月として位置づけると、何を書けばいいかがより見えやすくなります。
この記事についてよくある質問
月案(月間指導計画)とは何ですか?年間計画・週案とはどう違いますか?
月案とは、1か月単位でねらいと内容を具体化した指導計画です。保育所保育指針では、年間計画のような長期的な指導計画と、週案・日案のような短期的な指導計画に分けて位置づけられており、月案はその間をつなぐ計画にあたります。
月案の「ねらい」と「内容」はどう書き分ければいいですか?
ねらいは、前月の姿から今月育ってほしい方向を動詞で書く欄です。前月の姿を確認し、育ってほしい方向を決め、動詞で具体化するという3ステップで組み立てると書きやすくなります。
月案の「養護」と「教育」の違いは何ですか?
養護は生命の保持と情緒の安定という保育者が支える視点、教育は健康・人間関係・環境・言葉・表現という5領域で子どもがどう育つかを見る視点です。主語が保育者側か子ども側かで整理すると混同しにくくなります。
3歳未満児と3歳以上児で月案の書き方は変わりますか?
変わります。保育所保育指針では、3歳未満児は一人一人の生育歴や発達の実態に即した個別的な計画を作成すること、3歳以上児は個の成長に加え子ども相互の協同的な活動が促されるよう配慮することが示されています。
年齢別の月案文例を探している方へ
この記事では月案の書き方そのものを扱いました。クラスの年齢に合わせた月別の文例(4月〜3月)は、年齢ごとに分けてまとめています。
→ 0歳児の月案 文例集
→ 1歳児の月案 文例集
→ 2歳児の月案 文例集
→ 幼児クラス(3〜5歳児)の月案 文例集
まとめ
月案は、前月の子どもの姿から書き始める。この記事で一番持ち帰ってほしいのは、この1点です。ねらいの欄から先に埋めようとすると手が止まりますが、前月に実際に見た姿を思い出すところから始めると、言葉は自然と出てきます。今月の月案は、まず前月の記録を読み返すところから始めてみてください。