保育士の賃上げ2026|5.3%改定で給料は本当に上がるのか
この記事は2026年4月時点の情報をもとにしています。
「保育士の給料が上がる」。ニュースでそう見かけた方も多いと思います。
でも、こう思いませんでしたか。「本当に、自分の手取りに反映されるの?」
毎年のように、処遇改善のニュースは流れます。それなのに、給与明細を見ても実感がない。「上がったのは、どこの誰の話?」と思いながら働いている人は少なくありません。
そこでこの記事では、2026年度に実際に何が変わるのかを、数字で整理します。「なんとなく上がるらしい」で終わらせず、いくら・どの制度で・誰が対象なのかを、一つずつはっきりさせていきます。私も保育の現場に20年いて、この手の「上がるらしい」に何度も振り回されてきました。だからこそ、自分の園の場合で確かめる大切さをお伝えします。
2026年度の処遇改善の全体像
2026年度の保育士処遇改善は、大きく3つの柱があります。
| 柱 | 内容 | インパクト |
|---|---|---|
| 公定価格の人件費改定 | 5.3%の賃上げ | 全体の底上げ |
| 処遇改善加算の一本化 | 加算I・II・IIIを統合 | 制度の簡素化・配分の見直し |
| 配置基準の見直し | 4・5歳児25:1、1歳児5:1 | 人員増=負担軽減 |
月額だけを見ると、大きくは感じないかもしれません。でも、処遇改善加算と合わせれば、園によって手取りの増え方は大きく変わります。カギは、この「園によって」という部分です。
※5.3%の人件費改定はこども家庭庁「令和8年度公定価格・基準等の見直し事項」、処遇改善加算の一本化はこども家庭庁・文部科学省「施設型給付費等に係る処遇改善等加算について」(令和7年4月11日通知)、配置基準の見直しはこども家庭庁「保育提供体制の強化(職員配置基準の改善等)」にもとづく(いずれも2026年4月時点の情報)。
5.3%賃上げの中身
2026年度の公定価格改定で、保育士の人件費がこども家庭庁「令和8年度公定価格・基準等の見直し事項」により5.3%引き上げられました。
これは、国が保育園に支払う運営費のうち、人件費部分を増額するという意味です。つまり、園に入るお金が増えます。
そうなんです。公定価格の増額分を、どれだけ職員の給与に配分するかは、園の裁量に委ねられている部分があります。経営状態が厳しい園では、増額分が施設の維持費や借入金の返済に回るケースもあります。
ただし、処遇改善加算については、こども家庭庁・文部科学省「施設型給付費等に係る処遇改善等加算について」により「職員の給与に充てること」が義務づけられています。ここが、公定価格との大きな違いです。
処遇改善加算の一本化で何が変わるのか
これまで3つに分かれていた処遇改善加算は、こども家庭庁・文部科学省「施設型給付費等に係る処遇改善等加算について」(令和7年4月11日通知)により、令和7年度から一本化されています。
これまでの3つの加算
| 種類 | 支給額の目安 | 対象 |
|---|---|---|
| 加算I | 加算率 最大19% | 勤続年数に応じて変動 |
| 加算II | 月額5,000円または40,000円 | キャリアアップ研修修了者 |
| 加算III | 月額9,000円 | 全保育士 |
※処遇改善等加算I〜IIIの制度内容はこども家庭庁「処遇改善等加算Ⅰ~Ⅲの一本化について」(第8回子ども・子育て支援等分科会資料8)による(一本化前の制度。令和7年度から一本化済み)。
制度の統合なので、基本的には支給総額は維持される方向です。ただし、一本化にともなって配分ルールが変わる可能性があります。
これまで加算IIは、こども家庭庁「処遇改善等加算Ⅰ~Ⅲの一本化について」によれば「副主任・専門リーダー等の役職者に月4万円を1人以上」という配分ルールがありましたが、一本化後はこのルールが撤廃され、より柔軟に配分できるようになりました。園によっては、一般の保育士にも加算が行き渡りやすくなります。
一本化で手取りがどう変わるのかは、処遇改善加算の一本化をくわしく整理した記事でも扱っています。あわせて読むと、自分の園の場合が想像しやすくなります。
配置基準の見直しは保育士にとって何を意味するか
保育士の配置基準は、こども家庭庁「保育提供体制の強化(職員配置基準の改善等)」により、4・5歳児が2024年度から、1歳児が2025年度から、次のように見直しが進められています。2026年度もこの基準が続きます。
| 年齢 | 旧基準 | 新基準 |
|---|---|---|
| 4・5歳児 | 30:1 | 25:1 |
| 1歳児 | 6:1 | 5:1 |
※4・5歳児の25:1は、最低基準そのものが改正されたもの(経過措置あり)です。1歳児の5:1は、公定価格上の加算によって実現する基準で、施設が要件を満たして選んだ場合に適用されます。法律上の最低基準は6:1のままです。
配置基準の改善は、直接給与が上がる話ではありません。でも、間接的に影響があります。
保育士1人あたりの負担が減る。持ち帰り仕事が減る。残業が減る。結果として、実質的な時給が上がります。
さらに、配置基準を満たすために、園は保育士を増員する必要があります。保育士の需要が高まれば、待遇を改善しようという圧力もかかります。
園によって差が出る理由
処遇改善の恩恵を受けられるかどうかは、勤務先の園によって大きく変わります。
差が出る主な理由:
- 加算の配分率が違う:同じ加算を受けていても、職員にいくら配分するかは園ごとに違います
- キャリアアップ研修の受講状況:研修を修了していないと加算IIの対象になりません
- 認可外は原則対象外:この処遇改善加算(公定価格ベース)は、こども家庭庁・文部科学省「施設型給付費等に係る処遇改善等加算について」により認可保育所・認定こども園などが対象です。企業主導型保育事業など公定価格の対象外の施設には、公益財団法人児童育成協会「企業主導型保育事業 助成金(運営費)」による処遇改善加算(Ⅰ・Ⅱ)という、別の処遇改善の仕組みがあります
- 法人の経営判断:増額分を施設整備に回す園もあります
外からは、なかなか分かりません。だからこそ、確認する方法が大事になります。
自分の園が本当に上がるか確認する方法
方法1:直接聞く
園長や主任に「処遇改善加算はいくら配分されていますか」と聞く。直球で聞きにくい場合は、「来年度の処遇改善の予定はありますか」という聞き方でもいいです。
方法2:給与明細を確認する
処遇改善加算は、給与明細に「処遇改善手当」や「特殊業務手当」として記載されていることが多いです。記載がない場合は、基本給に含まれているか、そもそも配分されていない可能性があります。
方法3:モデル給与の公開情報を確認する
2025年度から、こども家庭庁「保育所等における継続的な経営情報の見える化について」にもとづき、子ども・子育て支援法の改正により、保育園の経営情報(モデル給与や人件費比率など職員給与に関する情報を含む)の報告・公表が制度化されています。自治体のウェブサイトや、園の採用ページで確認できるケースも増えてきました。
方法4:転職エージェントに聞く
まとめ
- 5.3%の賃上げで月給22万円なら年間約14万円の増額(総支給ベース)。ただし園による配分差がある
- 処遇改善加算の一本化で、一般保育士にも加算が行き渡りやすくなる可能性
- 配置基準の見直しで、保育士1人あたりの負担が軽減される
- 園によって差が大きい。自分の園の配分状況を確認することが先
「国が処遇改善をやっている」のは事実です。でも、その恩恵が自分に届いているかどうかは、自分で確認しないと分かりません。確認した結果「うちの園は配分が少ない」と分かったなら、それは転職を検討する、合理的な理由になります。
実際の水準感を知りたいときは、関東の保育士給与のリアルな調査もあわせてどうぞ。同じエリアでも園ごとに差が大きいことが分かり、自分の市場価値を測る材料になります。
処遇改善が手厚い園を探すなら
処遇改善加算の配分率は、求人票には載っていません。エージェントに「処遇改善が手厚い園を探している」と伝えるだけで、条件に合った園を絞り込んでもらえます。
P.S.
この記事は2026年4月時点の情報をもとにしています。処遇改善の詳細は年度ごとに変わり、金額や割合は自治体・園によっても異なります。最新情報は、こども家庭庁の公表資料か、エージェント経由で確認してください。
保育士の給料についてよくある質問
保育士の給料はなぜ安いのか
公定価格制度で国が人件費基準を決めており、園が利益を出しても給与に直結しない構造だからです。
保育園は、こども家庭庁・文部科学省「施設型給付費等に係る処遇改善等加算について」にある公定価格(税金からの運営費)にもとづいて運営されており、人件費の水準も公定価格の枠内で決まります。園が経営努力で利益を出しても、その分を保育士の給与に上乗せしにくい仕組みなのです。これが「保育士の給料が安い」と言われる最大の構造的理由。
保育士の給料が低い理由は何か
公定価格による人件費上限・配置基準のしわ寄せ・処遇改善加算の使途縛り、この3つが重なっているからです。
給与抑制の三大要因は ①公定価格による人件費の上限 ②国の配置基準が現場負担を増やしている ③処遇改善加算が園の裁量で再配分される、です。この3点が組み合わさって、現場保育士の手取りを押さえる構造になっています。
保育士の給料はいつから上がるのか
2026年度も公定価格上の人件費が5.3%引き上げられており、順次、給与に反映される見込みです。
2026年度は、こども家庭庁「令和8年度公定価格・基準等の見直し事項」により、保育士・幼稚園教諭等の人件費が5.3%引き上げられています。実際に手取りへ反映される金額や時期は、基本給や加算の配分によって園ごとに異なるため、自分の園の事務担当者に確認するのが確実です。
保育士は公立と私立どっちが給料いい
一般に、勤続年数が長くなるほど公立(公務員)が有利とされています。昇給と退職手当の制度が理由です。
公立保育士は地方公務員として、勤続年数に応じた昇給と退職手当の制度が適用されます。私立は法人ごとの差が大きく、同じ「私立」でも待遇の幅が広いのが実態です。ただし公立は採用数が少なく、狭き門です。具体的な金額差は勤続年数・自治体・法人で大きく変わるため、一律の数字では言えません。
保育士の給料が安いのは当たり前なのか
構造的には低水準ですが、エリア・運営法人・職種によって差が大きく、平均を上回る条件の園も存在します。
「当たり前」と思考停止する必要はありません。同じ保育士でも、エリア・運営法人・役職によって年収は大きく変わります。エージェント経由で求人比較すれば、自分の市場価値が見えます。