ヒヤリハット報告書は、①要因(なぜ起きたか)まで書く、②再発防止策は誰が何をするかまで書く、③個人の注意より環境改善・ルール化を優先する、の3点が要点です。

「書いたら怒られそうで、ヒヤリハットを報告しにくい」。そう感じている保育士は多いと思います。

特に1〜3年目。何かヒヤッとした場面があっても、「大したことじゃなかったし」「自分のミスを報告したくない」「先輩に怒られたくない」という気持ちで、書かずに終わる。その気持ちは、私もよくわかります。

🧑
保育士Bさん
「ヒヤリハットって、書くと自分のミスを報告することになるから、できれば書きたくない……って正直思ってた」

でも、書きにくいと感じるのは、あなたが子どもの安全を真剣に考えている証拠でもあります。そして、ヒヤリハットを書くことは「自分のミスの告白」ではありません。子どもの命を預かるプロとして当然の責任であり、ヒヤリハットを言葉にして残せる人こそ、誇っていい保育士です。

ヒヤリハットを書かないことは、子どもの安全にとって最もリスクが高い選択になってしまいます。

「1件の重大事故の背後には、29件の軽微な事故と300件のヒヤリハットがある」。ハインリッヒの法則として知られるこの原則は、保育現場でも当てはまります。

ヒヤリハットを積み上げて分析することで、重大事故を未然に防げます。書かないことで、同じリスクが繰り返されます。

私は保育士歴20年。大阪で経験を積み、ディズニー目当てで関東へ引っ越してきました。新人の頃は、ヒヤリハットを書くたびに先輩の顔色をうかがっていた人間です。この記事では、ヒヤリハット報告書の書き方と、報告しやすい職場環境を作るための考え方を整理します。


ヒヤリハットとは何か

「ヒヤリハット」とは、事故には至らなかったが、「ヒヤリとした」「ハッとした」場面のことです。

ヒヤリハットの例:

  • 走っていた子どもが転びそうになったが、間一髪つかまえた
  • テーブルの角に頭をぶつけそうになった
  • 園庭で子どもが柵によじ登ろうとしているのを発見した
  • おやつで食材が少し大きすぎて、子どもがむせた
  • 水遊び中に目を離した3秒間に子どもがよろけた

「大事には至らなかった」場面が、すべてヒヤリハットです。

👩
保育士Cさん
「これってヒヤリハットに当たるの?って判断がそもそも難しい。どこからが報告すべき出来事なのか」

判断の基準は、「もし1秒遅かったら、もし自分がいなかったら、どうなっていたか」を考えることです

「1秒遅かったら転んでいた」「自分がいなかったら柵から落ちていた」なら、ヒヤリハットとして記録する価値があります。


ヒヤリハット報告書の書き方

ヒヤリハット報告書に書くべき項目は5つです。

項目 内容 よくある間違い
① 日時・場所 いつ・どこで 「午前中」など曖昧にする
② 状況 何が起きたか 結果しか書かない
③ 関わった子ども 誰が・何歳 名前を省略する
④ 対応 その場でどう対処したか 書き忘れる
⑤ 再発防止策 次はどうするか 「気をつける」だけで終わる

① 日時・場所を具体的に書く

Before:

「午前中、園庭で」

After:

「10:15頃、園庭の砂場エリア(西側)」

場所は「園庭の砂場エリアの西側」「保育室のブロックコーナー付近」のように、具体的な場所まで書きます。後から環境的なリスクを分析できるようにするためです。


② 状況を「何が起きたか」→「なぜそうなったか」の順で書く

Before(よくある書き方):

「子どもが転びそうになった」

After:

「砂場で走っていたAちゃん(2歳)が砂の上で足を滑らせ、前につんのめった。砂の表面が雨上がりで濡れていたため、滑りやすい状態だった。保育士がすぐそばにいたため、右腕をつかんで転倒を防いだ。」

「何が起きたか」と「なぜそうなったか(要因)」をセットで書きます。要因を書くことで、再発防止策が具体的になります。

🧑
保育士Bさん
「要因まで書くのか。確かにそれがないと対策が『気をつける』しか言えなくなる」

③ 「再発防止策」は「気をつける」では書かない

Before(意味がない書き方):

「今後は気をつける」

これは再発防止策ではありません。「気をつける」では、同じことが繰り返されます。

After(具体的な再発防止策):

「雨上がりの砂場使用前に、表面の状態を確認し滑りやすい場合は活動場所を変更する。チェック担当を朝のミーティングで決める。」

再発防止策は「誰が」「何をするか」「いつするか」が入っている必要があります。そうでないと、誰も実行しません。

再発防止策の3つのレベル:

レベル 効果
環境改善 砂場の排水を改善する・すべり止めマットを設置する 最も効果が高い
ルール化 雨上がりは砂場使用前に状態確認を義務化する 中程度
個人の注意 「私が気をつける」 最も効果が低い

環境改善やルール化で対処できないか、まず考えます。「個人の注意」だけに頼る再発防止策は、同じ場面が来ると同じミスが起きます。


ヒヤリハットを「書きやすい環境」にする考え方

報告書を書くことへの「怖さ」は、「書いたら怒られる」「ミスを認めることになる」という思い込みから来ています。

この思い込みを変えるには、「ヒヤリハットは情報資産だ」という認識を職場で共有することが必要です。

ヒヤリハットを報告することのメリット:

  1. 同じリスクに気づいていなかった人に共有できる ……「そこが危険だったのか」と気づける人が増える
  2. 環境の問題を特定できる ……「この時間・この場所でヒヤリハットが集中している」という傾向が見えてくる
  3. 先手を打てる ……重大事故が起きる前に環境を改善できる

「報告したら怒られる」のは、報告を怒る側の問題です。「ヒヤリハットを報告してくれてありがとう」という文化がある職場では、報告件数が増え、事故発生率が下がるという研究もあります。

👩
保育士Cさん
「先輩に報告したら『報告してくれてよかった。次からはこうしよう』って言ってもらえた。それ以来、小さいことでも報告するようになった」

ヒヤリハット報告書のテンプレート

【ヒヤリハット報告書】

日時:      年   月   日   時   分頃
場所:
関わった子ども(人数・年齢):
担当保育士:

【状況(何が起きたか)】



【要因(なぜそうなったか)】



【対応(その場でどう対処したか)】



【再発防止策(誰が・何を・いつするか)】



1年目が覚えておきたい1つのルール

「ヒヤリハットかどうか迷ったら、書く。」

書きすぎて怒られることより、書かなかったことで重大事故が起きることの方が、はるかに大きな問題です。

「大したことないかも」と思った場面こそ、記録する価値があります。そのヒヤリハットが、誰かの命を救う情報になるかもしれません。


まとめ

ヒヤリハット報告書を書く時のポイントは3つです。なお、ハインリッヒの法則や厚生労働省の保育所での事故防止ガイドラインは、2026年5月時点でも保育現場のリスク管理の基本として参照されています。

  1. 「なぜそうなったか(要因)」まで書く ……要因がないと再発防止策が「気をつける」しか書けない
  2. 再発防止策は「誰が・何をするか」まで書く ……具体性がないと実行されない
  3. 環境改善・ルール化で対処できないか先に考える ……個人の注意だけに頼らない

「書くのが怖い」ではなく、「書かないことが最もリスクが高い」。そう考えると、ヒヤリハット報告書の見え方が変わります。そして、それを書ける自分を、どうか誇ってください。

ヒヤリハットについてよくある質問

ヒヤリハットと事故の違いは?

事故は実際に怪我や被害が発生したもの、ヒヤリハットは事故になりかけたが回避できたものを指します。

保育現場では、ヒヤリハットは「ヒヤッとした・ハッとした出来事」のうち怪我に至らなかった事象。事故は怪我・被害が現実に起きたケースです。ヒヤリハットを記録する目的は、事故の予兆を可視化して未然に防ぐことです。

ヒヤリハット報告書はどう書けばいい?

「日時・場所」「状況」「関わった子ども」「対応」「再発防止策」の5項目を簡潔に書くのが基本です。

ヒヤリハット報告書の必須項目は ①日時・場所 ②状況(何が起きたか) ③関わった子ども ④対応 ⑤再発防止策 の5つ。長く書く必要はなく、要点を絞って書きます。重要なのは犯人探しではなく原因分析です。

ヒヤリハットの事例にはどんなものがある?

転倒・誤飲・遊具からの落下・保育士の見落とし・保護者送迎時の置き去り、が頻出5パターンです。

保育園で多いヒヤリハット事例:①園庭での転倒 ②小さな玩具やシールの誤飲しそうになった ③遊具からの落下回避 ④午睡時のうつ伏せ寝 ⑤保護者送迎時の引き渡し確認漏れ。これらは厚労省ガイドラインでも頻出例として挙がっています。

ヒヤリハットがネタ切れの時はどうする?

「気になった一瞬」「ちょっと違和感」レベルでも全部書く、と認識を変えれば毎日出てきます。

ネタ切れと感じる原因は「事故になりそう」レベルまで上げてしまっているから。ヒヤリハットの本来の意味は「ヒヤッ・ハッとした感覚」で、些細な違和感も全部対象です。視点を下げれば毎日3件は見つかります。

ヒヤリハットは何語?

「ヒヤッとした」「ハッとした」を組み合わせた日本語のオノマトペ造語で、英語ではnear missです。

ヒヤリハットは1980年代に日本の労働安全分野で生まれた和製造語。英語ではnear miss(事故になりかけた事象)と訳されます。元はハインリッヒの法則(重大事故1:軽微事故29:ヒヤリハット300)の現場用語化が起源です。


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