新人保育士が最初の3ヶ月で知っておくべきこと——「1年目の壁」を乗り越えるための心構えと実践
4月から保育士として働き始めた人へ。
最初の3ヶ月は、おそらく今まで経験したことのない種類の疲れが来る。
体の疲れ。頭の疲れ。感情の疲れ。それが全部同時に来る。「保育士に向いていないのかも」と思う日が来る。「辞めたい」と思う夜が来る。
🐰 ピョンちゃん
「1ヶ月目で『もう辞めたい』って思った。朝、起きるのがつらくて。でも辞めていいのかも分からなくて」
その「つらさ」は、あなたが弱いからではない。最初の3ヶ月は、ほとんどの保育士がつらい。問題は「つらさ」そのものではなく、「なぜつらいのか」を理解していないことだ。
この記事では、1年目の3ヶ月に何が起きるかを整理し、知っておくと楽になることをまとめた。
なぜ最初の3ヶ月がきついのか
1年目の保育士がしんどい理由は、大きく3つある。
① 「知らないこと」が多すぎる
保育士の仕事は、資格を取っても実務ではほとんど何も知らない状態から始まる。
- この子の発達状況はどのくらいか
- 今日の午前中は何をやればいいか
- 保護者にはどのタイミングで何を話せばいいか
- 連絡帳には何を書くべきか
- 先輩は今、何を自分に期待しているのか
全部わからない。でも、子どもたちは待ってくれない。
「わからないまま動く」を毎日繰り返す。消耗する。
🐻 クマオ
「先輩に聞けばいいと分かってるんだけど、聞くタイミングも分からなくて。先輩忙しそうで聞きづらくて」
② 「職場のルール」を1から覚える
職場によって、やり方がまったく違う。前の実習先と今の職場でやり方が違う。でも「なぜそうするのか」の説明は省略されることが多い。
「なんとなくこうするもの」という暗黙のルールに気づかず、知らないうちに先輩の機嫌を悪くしてしまう。
③ 感情の消耗
子どもと向き合う仕事は、「感情を使う仕事」だ。
嬉しいこともある。でも、子どもが泣き続ける時間・保護者にきついことを言われた瞬間・先輩に叱られた後——感情が消耗する場面が毎日ある。
感情の消耗は、身体の疲れより回復に時間がかかる。
最初の3ヶ月を生き延びるための心構え
「できなくて当たり前」を本気で受け入れる
1年目は「できない」が前提だ。問題は「できないこと」ではなく、「できないことを隠そうとすること」と「できないのは自分が悪いと思いすぎること」だ。
できないことを隠すと、後で大きなミスになる。
「自分が悪い」と思いすぎると、精神が持たない。
「できない」は情報だ。「今の自分には、これがまだわからない」という情報。それを先輩に伝えれば、先輩は教えられる。
🐰 ピョンちゃん
「『できます』って言ってやってみて、実は全然できてなくて先輩に余計な迷惑をかけたことがある。早く言えばよかった」
「1つ覚えたら今日は合格」にする
1日に10個覚えようとしない。1日1つでいい。
連絡帳の書き方を覚えた。今日は合格。
午睡の見守りのタイミングを知った。今日は合格。
子どもAの好きな遊びを把握した。今日は合格。
1つ1つ積み上げれば、3ヶ月後には90個覚えている。それだけで全然違う。
先輩に「積極的に聞く」ための一言を決めておく
「聞くタイミングが分からない」は多くの1年目が感じること。先輩が動いている時は確かに聞きにくい。
使いやすい声かけパターン:
- 「少しよろしいですか?○○についてなのですが」(端的に件名を先に言う)
- 「後でご確認いただけますか?」(急ぎでない時は時間を指定しない)
- 「実は確認したいことがあって、今大丈夫ですか?」(許可を取る)
「聞くのが申し訳ない」という気持ちは捨てる。1年目が聞かないと、先輩も困る。
月別にやるべきこと
4月(1ヶ月目):「覚えること」に集中する
4月は、とにかく観察する。
- 子ども全員の名前を覚える
- 1日の流れを覚える
- 自分の担任クラスの子どもの特徴を把握する
やらなくていいこと: 積極的な提案、保護者への積極的な発言、自己流でのアレンジ
4月は「吸収の月」だ。アウトプットより、インプットを優先する。
🐻 クマオ
「4月は先輩のやり方を全部真似するくらいの気持ちでいいと聞いた。なるほどと思った」
5月(2ヶ月目):「慣れてきたこと」と「まだ分からないこと」を分ける
ゴールデンウィーク明けから、「1ヶ月目の疲れ」が出てくる。これが保育士の「5月病」の正体だ。
体が慣れてきた反面、「これが毎日続くのか」という現実感が来る。「辞めたい」という気持ちが強くなる人が多い。
この時期に必要なのは「仕分け」だ。
慣れてきたこと(今のままでいい) と まだ分からないこと(誰かに聞く) を分ける。
全部がしんどいわけではない。しんどい部分を特定すると、対処できる。
5月のチェックリスト:
- [ ] 子ども全員の名前と顔が一致している
- [ ] 1日の流れが体に入っている
- [ ] 先輩の指示なしに動ける場面が増えてきた
- [ ] 連絡帳を一人で書ける
「できている」にチェックが入れば、それが自信になる。
6月(3ヶ月目):「自分のペース」を作り始める
3ヶ月が経つと、少しずつ「自分のやり方」が見えてくる。
連絡帳を書くタイミング、子どもとの関わり方のコツ、先輩との距離感——自分のペースができ始める。
この時期にやっておきたいのが「振り返りのメモ」を始めること。
毎日ではなくていい。週に1回、「今週うまくいったこと・よく分からなかったこと」を2〜3行でメモする。これが積み重なると、半年後に読み返した時に自分の成長が見える。
🐰 ピョンちゃん
「3ヶ月が経った時、最初の頃の自分と今の自分が全然違うと感じた。指導案も連絡帳も、4月よりずっとスムーズに書けてる」
「つらくなったとき」のセルフチェック
最初の3ヶ月で「もう無理かも」と感じた時、立ち止まって確認してほしいことがある。
① それは「仕事が合わない」のか、「この職場が合わない」のか
「保育士の仕事自体がしんどい」のと、「この職場のやり方が合わない」は、別の問題だ。前者なら方向性を考え直す必要があるが、後者なら職場を変えることで解決するケースが多い。
② 「仕事に慣れていないからしんどい」のか、「環境がおかしいからしんどい」のか
1年目は仕事に慣れていないから疲れる。それは当然だ。でも、「1年目だから我慢しなさい」と言いながら理不尽な扱いをする職場もある。その見分けは、「先輩たちも疲弊しているか」を観察するとわかる。ベテランも同様にしんどそうにしているなら、職場の構造に問題がある。
③ 身体のSOSを無視していないか
眠れない・食欲がない・出勤前に腹痛がする——これらは身体のSOSだ。「1年目だから」で乗り越えられるしんどさと、乗り越えられないしんどさがある。身体のサインは無視しない。
🐻 クマオ
「朝起きた時に『今日も行かないといけない』しか思えなくなったら、それは危険サインだと先輩から言われた」
まとめ
最初の3ヶ月で知っておくべきことは4つ。
- 「できなくて当たり前」を本気で受け入れる — 隠さない、自分を責めすぎない
- 1日1つ覚えれば合格にする — 全部を一気に覚えようとしない
- 月別のゴールを決める — 4月は覚える、5月は仕分ける、6月はペースをつくる
- 「仕事が合わない」と「職場が合わない」を分けて考える — 後者なら転職で解決できる
最初の3ヶ月を乗り越えた保育士は、半年後には全然違う自分になっている。
今の「わからない」は、必ず減る。