千葉・埼玉・神奈川から都心の保育園に通っている保育士は多い。

理由はシンプルだ。都心の保育園は給与が高め。郊外の保育園より月1〜2万円多いケースは珍しくない。

だから「給与のために電車で1時間通う」という選択をする。

🐻 クマオ
「千葉から池袋の保育園まで1時間20分かけて通ってた。乗り換え2回。ドア・トゥ・ドアで1時間半」

でも、その計算は合っているのか。「都心の高給」と「郊外の職住近接」、どちらが保育士の生活を豊かにするか。

この記事では、郊外から都心通勤を続けて限界を迎え、地元エリアに転職した保育士のリアルと、千葉・埼玉・神奈川エリアの求人傾向を整理する。


「通勤90分」が奪うもの

通勤時間は単なる移動時間ではない。

往復3時間の通勤を続けると、1日のうち3時間が「移動」に消える。月20日出勤なら、月60時間。年間720時間。

年間720時間——これは1日8時間働くとして、約90日分に相当する。

しかも保育士の仕事は体力を使う。子どもと走り、抱っこし、声を出し続ける8時間を終えてから、満員電車で90分立ちっぱなしで帰宅する。

🐻 クマオ
「帰りの電車、立ったまま気を失いそうになったことが何度もあった。座れた日はラッキーって感じで」

帰宅は19時〜20時。夕食を作る気力はない。コンビニ飯か外食。風呂に入って22時。翌朝6時に起きる。

それを毎日繰り返す。

「給与が高い」は事実だ。でも、通勤に消えた時間と体力の「コスト」を差し引きしたら、どうなるか。


転職で変えた3つのこと

郊外に転職した保育士に共通する「変化」が3つある。

① 通勤時間が「徒歩または自転車圏内」になった

都心の保育園から地元の認可保育園に転職した保育士の多くが、通勤時間を「15〜30分以内」にしている。

自転車で通える距離になったケースも多い。「電車を降りて保育園まで歩く」という感覚がなくなるだけで、体力の消耗が全然違う、という声が多い。

🐻 クマオ
「今は自転車で15分。通勤途中にスーパーに寄れる。夕食を作る時間も気力もある。生活が変わった」

② 「帰宅後の自分の時間」が戻った

19時帰宅が、17時半帰宅になった。この1時間半の差は大きい。

夕食を作れる。本が読める。友達と外食できる。趣味の時間が持てる。「仕事以外の自分」を取り戻せる。

保育士の離職理由の中に「プライベートの充実」を求めることがある。それは「今の職場が嫌」ではなく、「今の生活が持続不可能」というサインだ。

③ 給与が「思ったより下がらなかった」

「都心より給与が下がる」という前提は、必ずしも正しくない。

郊外エリアでも、処遇改善等加算・各種手当を含めると、都心との差が1〜2万円以内に収まるケースが多い。さらに借り上げ社宅制度がある園では、実質の生活費が都心勤務時より低くなることもある。

ケーススタディ:クマオのケース

項目 転職前(都心) 転職後(千葉)
基本給 25万円 23万円
通勤手当 1.5万円 0.5万円(自転車)
残業(月平均) 20時間分=2万円 5時間分=0.5万円
実質手取り 約21万円 約20万円
通勤時間/日 3時間 30分
帰宅後の自由時間 1時間未満 3時間以上

給与の差は月1万円。でも、通勤時間の差は1日2.5時間。月50時間、年間600時間の差になる。

🐻 クマオ
「月1万円のために年間600時間を売っていたんだ、と気づいた時、転職の判断は正しかったとはっきり思った」

千葉・埼玉・神奈川エリア別の求人傾向

千葉エリア

特徴: 地域によって求人の質に差がある。柏・松戸・流山・船橋・千葉市といった主要都市近郊は求人数が多く、競争率も適度。

給与相場: 月22〜24万円(経験3年・正社員)

注目ポイント:
- 流山市は子育て支援に力を入れている行政施策が多く、保育環境が整いやすい
- 千葉市は認可保育園の新設が多く、新しい職場環境の求人が増えている
- 市川・船橋は都内へのアクセスが良く、「将来都心に戻る選択肢」を残せる

借り上げ社宅制度: 千葉市・船橋市は補助率が高い。月8万円までの家賃補助が出る园も複数あり。


埼玉エリア

特徴: さいたま市を中心に、川口・戸田・越谷・春日部など求人の選択肢が広い。関東では保育士不足が深刻な地域の一つで、条件が改善されている园が多い。

給与相場: 月22〜24万円(経験3年・正社員)

注目ポイント:
- さいたま市は「保育士確保対策事業」として独自の補助金制度を持つ
- 自然保育・モンテッソーリ系の認可外・認可保育園が増えている(にゃーこ系の読者にも参考になる)
- 大宮・浦和エリアは商業施設も多く、休日の生活利便性が高い

🐻 クマオ
「埼玉って地味に住みやすい。家賃も安い。東京に出るのも池袋まで30分。バランスいい」

神奈川エリア

特徴: 横浜・川崎は都市規模が大きく、求人数が多い。横浜市は保育士の処遇改善に積極的で、補助金制度が手厚い。

給与相場: 月23〜25万円(経験3年・正社員)※横浜市・川崎市は都心と同等水準の園も多い

注目ポイント:
- 横浜市は「横浜型処遇改善費」として独自の賃金補助があり、給与水準が高め
- 海老名・相模原・藤沢など郊外は家賃が安く、通勤が楽な生活設計ができる
- 川崎市は武蔵小杉・溝の口など再開発エリアに新しい認可園が増えている


郊外転職で後悔しないための3つの確認事項

① 借り上げ社宅制度を必ず確認する

郊外に転職する際、「給与が下がる」ことへの不安は当然ある。それを補うのが借り上げ社宅制度だ。

月家賃8万円の部屋に住んでいて、借り上げ社宅で6万円が補助されれば、実質の家賃負担は2万円になる。手取りが1万円下がっても、生活費全体では「プラス5万円」の計算になり得る。

確認方法: 求人票の「手当」欄、もしくは見学・面接時に直接聞く。「借り上げ社宅制度の対象上限額と本人負担額を教えてください」と聞けばいい。

② 残業の実態を聞く

「定時17時30分」と書いてある求人でも、実際の退勤時間は全然違うことがある。求人票に書いてある「残業なし」は鵜呑みにしない。

見学時に「先生方は何時頃退勤されていますか?」と聞く。もし「17時半〜18時が多い」と返ってきたら信頼できる。「それは…場合によりますね」という答えが返ってきたら要注意。

🐻 クマオ
「今の園は見学の時に主任が『18時には全員帰ります、残業させないようにしてる』と言ってた。実際その通りだった」

③ 見学は必ず行く

郊外転職は、職場の雰囲気が大事だ。「通勤が楽になった分、職場に嫌な人がいたら最悪」という状況を避けるために、見学で先生たちの顔を見る。

見学で確認するポイント:
- 廊下や部屋で、先生同士がどんな話し方をしているか
- 子どもに対してどんな声のトーンで話しているか
- 先生たちの表情が疲れていないか

書類だけではわからないことが、見学の30分で全部わかる。


まとめ

郊外転職を考える保育士へ伝えたいことは、1つだ。

「都心の給与」と「郊外の生活」を、時間軸で比較する。

月1〜2万円の給与差より、毎日の2〜3時間の通勤時間の方が、5年・10年単位で見ると人生への影響が大きい。

「どこで働くか」が変わると、「どう生きるか」が変わる。
通勤時間が変わると、帰宅後の時間が変わる。
帰宅後の時間が変わると、人生の密度が変わる。

郊外転職は「都心を諦めること」ではない。
「自分の生活を取り戻すこと」だ。