保育士資格で働ける保育園以外の仕事21選—「保育園しかない」は思い込みだった
「先輩、保育士資格って保育園以外でも使えるんですよね?」
後輩のにゃーこにそう聞かれたとき、私は一瞬止まった。
「あ、使えるよ」とは言えた。でも、具体的に何があるかを、その場ですぐ答えられなかった。保育士として10年以上働いてきたのに、自分が持っている資格がどこで使えるかを、ちゃんと整理したことがなかった。
🐱 にゃーこ
「前職の渋谷の企業内保育を辞めるとき、正直ちょっと保育園以外の仕事も調べたんです。保育じゃない仕事に移ることで、何かが変わる気がして」
その話を聞きながら、私はふと思った。保育士って、いざ職場を変えようと思ったとき、「保育園かそれ以外か」の二択で考えがちなんだな、と。
その日の帰り道、自分で調べてみた。出てきた選択肢の多さに、正直驚いた。
「保育士の転職先は保育園か、完全に異業種か」——この思い込みが、多くの保育士の選択肢を狭めている。この記事では、保育士資格が使える仕事を21種、現場目線で整理する。
保育士資格が使える21の仕事——全体像
まず全体を俯瞰する。
| カテゴリ | 仕事の種類 | 数 |
|---|---|---|
| 保育施設系 | 学童保育・企業内保育所・認定こども園・院内保育・事業所内保育 | 5 |
| 療育・支援系 | 児童発達支援・放課後等デイサービス・障害児入所施設・児童養護施設 | 4 |
| ベビー・家庭系 | ベビーシッター・産後ドゥーラ・マタニティ関連施設 | 3 |
| 行政・相談系 | 子ども家庭支援センター・ファミリーサポートセンター・保育行政 | 3 |
| 完全異業種系 | 保育ICTサービス・教育系出版・人材業界・一般企業HR・保育系ライター・保育コンサルタント | 6 |
保育士資格は「子どもに関わる仕事専用の免許」ではない。「子どもの発達・生活・安全に関する専門資格」だ。その専門性を必要とする場所は、保育園の外に無数にある。
👩🏫 先生
「保育士資格はな、児童福祉法に基づく国家資格や。条文には『児童の保育及び児童の保護者に対する保育に関する指導を行うことを業とする者』って書いてある。保育園って単語は出てけえへん。つまり、児童福祉を担う現場なら、原則どこでも名乗れるっちゅうことや」
保育施設系(5選)——働き方が変わるだけで、資格がそのまま活きる
「保育園とは違う場所で働きたい、でも保育の仕事は続けたい」という人に向いているのが、この5つだ。
1. 学童保育(放課後児童クラブ)
小学1〜6年生の放課後を預かる施設。保育園との大きな違いは、勤務時間帯だ。午後出勤が基本で、ほとんどの施設は18〜19時に終わる。
行事の数が保育園より少なく、持ち帰り仕事もほぼない。「朝の準備が体力的にきつい」「早番が続くのがしんどい」という人には、働きやすい環境だ。
給与目安は月18〜24万円。保育園と同程度か、やや低めのケースもある。ただし、残業が少ない分、実質的な時間単価は上がることが多い。
2. 企業内保育所
大手企業や医療機関が従業員向けに設ける保育施設。運営母体が企業なので、福利厚生が企業水準になるのが最大の特徴だ。
交通費全額支給・年間休日120日以上・社食利用可・育休取得率ほぼ100%——そういったスペックの職場が普通に存在する。給与は月22〜28万円で、保育園より高いケースが多い。
預かる子どもの数が少なく(10〜30人程度が多い)、行事の規模も小さい。「保育の中身に集中したい」タイプに合う。
🐱 にゃーこ
「これ、私がまさにいた場所です。渋谷のビル8階で、企業の従業員のお子さんを預かる園。条件は悪くなかったんです、福利厚生も休みも。ただ、運営会社に保育の理念がなくて『とにかく回してくれ』って空気で……それが苦しくて辞めました。だから企業内保育=安心、とは一概に言えないなって。園じゃなく運営会社の方針を見たほうがいい、って後輩には必ず伝えてます」
企業内保育と一口に言っても、大手企業直営型・保育事業会社への委託型・医療機関直営型では中身がかなり違う。募集要項だけでなく「運営母体の哲学」を見に行くのが大事だ。
3. 認定こども園
幼稚園と保育園が一体化した施設で、保育士資格と幼稚園教諭免許の両方を持っていると有利になる。ただし、保育士資格だけでも働ける。
保育園との違いは、教育的な側面が強いことと、給与体系が園によって大きく異なること。公立型は待遇が安定していて、私立型は給与の幅が広い。
4. 院内保育所(病院内保育)
病院に勤務する医師・看護師・医療スタッフの子どもを預かる施設。夜勤帯のシフトがある分、夜勤手当がつく。月収が一般の保育施設より高くなりやすい。
夜勤があるため体力的なハードルはあるが、子どもの数は少人数で、保育内容は家庭的な雰囲気が多い。
🐻 クマオ
「僕、片道2時間通勤で限界だった時期に、院内保育を真剣に検討したんですよ。夜勤ありで収入上がる、人数少なくて関係も深い、家からも近い。条件だけ見れば最高。でも見学に行って、夜中にナースステーションの緊張感の中で子ども寝かしつけてる自分を想像したときに、『あ、これ僕の保育やりたい形じゃないな』って気付いた。それで結局、保育園の中で職住近接を探す方向に切り替えたんです」
「保育園以外の選択肢を一度は真剣に検討する」こと自体に意味がある、とクマオは後から言っていた。比較対象を持ったうえで保育園に戻ってきた人は、自分の職場を選び直した感覚を持てる、と。
5. 事業所内保育所(小規模)
2015年の子ども・子育て支援新制度で整備された「小規模保育」「事業所内保育」。預かる子どもは0〜2歳、定員は19人以下が多い。
少人数ゆえに、一人ひとりをじっくり見られる。「大勢を一度に見るのが苦手」という保育士に向いている環境だ。
療育・支援系(4選)——専門性が深まり、給与も上がりやすい
「子どもの成長に深く関わりたい」「保育だけでなく福祉的な関わりがしたい」という人に向く4つだ。専門知識が深まるほど、資格手当・専門手当がつくケースが多い。
6. 児童発達支援
発達に遅れや障害のある就学前の子ども(0〜6歳)を支援する施設。保育士資格は有効で、そのまま働ける。
仕事は保育に近いが、より個別対応が多い。「この子のためにどんな活動が合うか」を考える場面が多く、創意工夫が活きる環境だ。給与は月20〜26万円。療育系の資格(発達支援士など)を取ると給与が上がりやすい。
7. 放課後等デイサービス
就学後(小〜高校生)の障害のある子どもの放課後支援。学童保育の「障害児版」に近いイメージだ。
1日の利用人数は少なく、スタッフと子どもの比率も保育園より高い。「一対一でじっくり関わりたい」という保育士に向いている。給与は月20〜26万円。運営事業者によって差が大きい。
8. 障害児入所施設
障害のある子どもが生活する施設。保護者と離れて生活する子どもの、日常の全てに関わる仕事だ。
食事・入浴・就寝の介助から、学習支援・余暇活動まで幅広い。夜勤があるが、夜勤手当で月収が上がる。深く関わりたい人向けの環境だ。
9. 児童養護施設
家庭で暮らせない子ども(虐待・親の病気・貧困など)が生活する施設。保育士資格が有効で、そのまま働ける。
子どもの背景が複雑な分、精神的にタフな仕事だ。ただし、「保育で得た信頼関係の作り方」が、ここでは特に武器になる。月収は20〜25万円、夜勤手当別。
ベビー・家庭系(3選)——自分の働き方をデザインしやすい
保育士資格が「個の仕事」として使えるカテゴリ。雇用されず独立する選択肢も含む。
10. ベビーシッター
家庭に出向いて個別に子どもを預かる仕事。時給1,200〜2,500円(資格保有・経験者は高め)。
マッチングサービスを使えば、自分でシフトを組める。副業として始めて、収入を積み上げながら独立する人もいる。保育士資格があると信頼が高く、単価を上げやすい。
保護者との信頼関係が命の仕事なので、コミュニケーション力が活きる。
🐰 ピョンちゃん
「家賃9万で手取り19万、貯金ほんまゼロだった時期、ベビーシッターの副業を本気で調べてました。土日に2軒まわれば月3〜4万増える計算で。でも園の就業規則で副業NGだったし、平日疲れ切ってて土日に人の家に行く体力も残ってなくて、結局やれなかったんです。で、借り上げ社宅制度のある園に転職して家賃負担が一気に軽くなって、副業する必要そのものがなくなった。あのとき『稼ぎを増やす』より『出費を減らす』方向に舵切って正解でした」
保育士資格を個の仕事として使える選択肢は魅力的に見える。ただし、本業の就業規則・体力・時間のコストを差し引いて、それでも割に合うかを計算したほうがいい。
11. 産後ドゥーラ
出産直後の母親・家族をサポートする専門職。赤ちゃんのケア・育児相談・家事援助などを行う。
保育士資格は必須ではないが、「乳幼児の扱いに慣れている」という強みが評価される。産後ドゥーラの養成講座(民間資格)を取得すると仕事の幅が広がる。
在宅ワーク・訪問型の仕事で、子育てが一段落した年齢層の保育士にも需要がある。
12. マタニティ関連施設
産婦人科・助産院・マタニティスタジオなどで、妊婦や新生児・乳児に関わる仕事。保育士資格があると、出産後の育児指導や新生児ケアの担当として重宝される。
「子どもの発達初期からサポートしたい」という人に向く方向性だ。
行政・相談系(3選)——安定した環境で専門性を発揮する
公的機関や地域密着型の施設で、保育の専門知識を「相談」という形で活かす3つだ。
13. 子ども家庭支援センター
地域の子育て家庭の総合相談窓口。保育に関する相談から、育児不安・DV・虐待の初期対応まで幅広い。
保育士資格があれば採用対象になる。「保育の現場で見えてきた家庭の課題を、もっと手前で支援したい」という人に合う仕事だ。自治体によっては常勤の公務員待遇もある。
14. ファミリーサポートセンター
地域の子育て相互援助を仲介するコーディネート施設。保護者と援助会員(子どもを預かるボランティア)のマッチングを行う。
保育の知識を「コーディネート」という形で使う仕事で、直接保育をするわけではない。「人と話すのが好き」「保育の知識を違う形で活かしたい」という人向けだ。
🐰 ピョンちゃん
「副業ムリでも、子育て支援員の研修を受けてファミサポの援助会員になる、って道はちょっと考えたんです。時給1,000円くらいやけど、空いた日だけでいいから副業NGの園でもOKだった。結局転職で解決したからやらなかったけど、『本業を辞めずに保育の知識を別の形で回す』って選択肢は、もっと知られていいと思います」
15. 保育行政(自治体職員)
自治体の保育担当部署で、認可保育所の指導・審査・補助金管理などを担当する。
採用は自治体職員採用試験を経るのが基本だが、専門職採用(保育士資格保有者枠)を設ける自治体も増えている。公務員なので安定性は最高水準。現場経験があると、指導・審査の場面で説得力が出る。
完全異業種系(6選)——「保育士だった」が武器になる仕事
保育の現場を離れるが、保育士経験・資格が差別化要因になる仕事が存在する。
16. 保育ICTサービスの企業
保育士の事務負担を減らす「連絡帳アプリ」「シフト管理システム」などを開発・販売する企業がある。こうした企業は「現場をわかっている人」を採用したがっている。
営業・カスタマーサクセス・プロダクト開発の補助——いずれも保育士経験が直接活きる。月給25〜35万円程度。IT知識は入社後で十分なケースが多い。
🐻 クマオ
「院内保育を検討したのと同じ時期に、保育ICT企業のカスタマーサクセスの求人も見ました。月給28万円、完全在宅、残業ほぼゼロ。数字だけなら完全に勝ち。でも1週間考えて気付いた、『僕は子どもの顔が見えない場所で働くと、自分の価値を見失う人間だ』って。これ、本当に人による話で、逆に現場から離れたほうが伸びる保育士もいる。向き不向きの見極めが要ります」
17. 教育系出版・メディア
保育雑誌・子ども向け教材・育児メディアなどで、コンテンツ制作・編集・監修を担当する仕事。
「現場の保育士が書いた」「現役保育士監修」という肩書きが、コンテンツの信頼性になる。ライターとして副業から始める人もいる。在宅勤務可の企業が多い。
18. 人材業界(保育士特化の転職エージェント)
保育士の転職を支援するキャリアアドバイザーのポジション。保育士経験があるアドバイザーは、「この人はわかってる」と転職希望者から信頼されやすい。
未経験OKで採用する企業も多い。給与は歩合制が多く、月25〜40万円程度(経験・実績による)。
異業種への第一歩として選ぶ保育士も増えている職種だ。
→ 異業種転職を本気で考えているなら、まず相談から
保育士から異業種への転職は、一人で進めようとすると行き詰まりやすい。第二新卒・未経験転職の専門エージェントに話を聞いてもらうのが、最短距離だ。

19. 一般企業の人事・HR(子育て支援担当)
企業の人事部門で、育児休業制度の整備・復職支援・社内保育所の運営管理などを担当するポジション。
「子どもの発達がわかる」「保護者と話すのが得意」という強みが、企業の人事領域で評価される場面がある。大手企業を中心に、子育て支援担当の需要は増えている。
20. 保育系ライター・ブロガー
保育の専門知識を記事として書く仕事。副業から始めて収入を積み上げる人、独立して専業にする人、どちらもいる。
資格保有者の文章は信頼性が高く、SEO上でも有利になることがある。パソコン一台で始められる点が、保育士の副業として選ばれやすい理由だ。
21. 保育コンサルタント・研修講師
保育施設の運営改善・職員育成・研修プログラムの提供を行う仕事。現場経験が長いほど、説得力が出る。
独立型の仕事なので、即座には収入にならないケースが多い。「10〜15年以上の現場経験を持つ保育士が、経験を体系化して提供する」というキャリアパスだ。
「向いている仕事」の見つけ方——3つの問い
21種類を並べてみたが、「結局どれが自分に向いているか」が大事だ。
問い1:「子どもと直接関わりたい」か、「子どもを取り巻く環境を整えたい」か?
直接関わりたいなら、保育施設系・療育系・ベビー系が向いている。環境を整えたいなら、行政系・ICT系・人材系が合う。
問い2:「今の保育の仕事を続けたいが、職場環境を変えたい」か、「保育そのものを変えたい」か?
職場環境の問題なら、同じカテゴリ内で転職するだけで解決する可能性が高い。保育そのものを変えたいなら、療育・行政・異業種に目を向ける。
問い3:「安定収入」か「自由な働き方」か?
公的機関・企業内保育は安定性が高い。ベビーシッター・ライター・コンサルタントは自由度が高いが収入の変動がある。どちらを優先するかで選択肢が絞られる。
🐱 にゃーこ
「私、この3つの問いを当時の自分に投げたら、答えは全部『子どもと直接関わりたい』『職場環境を変えたい』『安定収入』だったんです。つまり答えは最初から出てた。『保育園のまま、理念のある園に変える』が正解やった。回り道して異業種まで見に行ったからこそ、確信を持って今の園に来れた気がします」
回り道は無駄じゃない、というのが にゃーこの結論だ。21種をいったん全部眺めてから、自分の軸で削っていく。そのプロセスが、結果的に納得感のある選択につながる。
「向いてる仕事がわからない」ときは、この3問に正直に答えてほしい。答えが出れば、21種のどのカテゴリに向かうべきかが見えてくる。
→ 保育施設への転職なら、ほいく畑に相談してみる
企業内保育・院内保育・学童保育など、保育施設の中でも職場環境が整っているところを探したいなら、保育士専門の転職サービスが使いやすい。

保育士資格は「保育園で使う免許」ではない。
子どもの成長・生活・安全に関わる場所なら、どこでも通用する専門資格だ。
「このまま保育園で働き続けるしかないのかな」と思っていたなら、その考えを一度置いていい。21種の中に、今より自分らしく働ける場所がある。