月末が近づくと、あの作業がやってくる。

おたよりの作成。中でも一番手が止まるのが、冒頭の書き出し部分だ。

「暑い日が続いていますが」「梅雨に入りましたが」「朝晩の冷え込みが厳しくなってきましたが」——気づいたら毎月、天気の話から始めている。それが悪いわけではない。でも「保護者は本当に天気の報告を読みたいのか?」と思ったことがある人は多いはず。

🐻 クマオ
「おたよりの冒頭文だけで30分かかることがある。他の先生のを見ても、結局似たような文面になってしまう……」

30分。その時間があれば、保育準備にも記録にも使える。

冒頭文で悩む時間を減らす方法は、実はシンプルだ。「天気の話」ではなく「子どもの姿」から書き始める——これだけで、保護者の読む意欲も、書く側の手応えも変わる。


なぜ「天気から始める」と手が止まるのか

天気の挨拶は確かに無難だ。でも無難だからこそ、毎月同じような文面になりやすい。

「暑くなりましたが〜」「涼しくなりましたが〜」「寒くなりましたが〜」——この構文を12回繰り返すと、書く側が飽きる。飽きると筆が止まる。筆が止まると「おたより作成=面倒な仕事」になる。悪循環だ。

そしてもう一つ。保護者がおたよりを手に取る理由は「天気を知りたい」からではない。「うちの子が園でどう過ごしているか」を知りたいから読む。

冒頭の数行は、読むか読まないかを決める最初の判断ポイント。ここで「子どもの姿」が見えると、保護者は先を読み進める。天気の話だと、目が滑る。

🐱 にゃーこ
「確かに、保護者から『おたより読みました!』と声をかけられるのって、子どもの具体的なエピソードを書いた時が多い気がする」

コツ① 子どもの「動作」から入る

一番簡単な方法がこれ。子どもが何をしているか、その動作を一つ書くだけでいい。

NGではないけど、もったいない例:

「梅雨の季節になりました。雨の日が続いていますが、子どもたちは元気に過ごしています。」

動作から入る例:

「水たまりを見つけると、目を輝かせて駆け寄る子どもたち。長靴でバシャバシャと足踏みする音が、園庭に響いています。」

何が違うか。後者は映像が浮かぶ。保護者が読んだとき、「うちの子もこんな風にしてるんだろうな」と想像できる。これが「伝わるおたより」の最初の一歩。

書き方のポイント:
- 「〇〇しています」ではなく、「〇〇する姿が見られます」「〇〇する子どもたちの声が聞こえます」など、五感を使った表現にする
- 全員に当てはまらなくてOK。クラスの中の「よくある光景」を1つ切り取ればいい


コツ② 子どもの「成長」を1つ入れる

保護者が最も嬉しいのは、わが子の成長を知ること。冒頭に「成長が見えるエピソード」を1つ入れるだけで、おたよりの価値が上がる。

例(4月):

「入園から3週間。『先生、おはよう!』と自分から声をかけてくれる子が増えてきました。最初は泣いていた朝の時間が、少しずつ笑顔の時間に変わっています。」

例(9月):

「夏休みが明けて、ひと回り大きくなった子どもたち。着替えを自分でやろうとする姿、お友達に『貸して』と言葉で伝えられるようになった姿——小さな成長があちこちで見えています。」

例(12月):

「『自分で!』が口癖になった12月。靴を履く、カバンを持つ、上着のチャックを閉める。4月にはできなかったことが、いつの間にかできるようになっています。」

🐻 クマオ
「こういうのって、0歳児クラスでも使えるんですか?まだ言葉が出ない子もいるし……」

0歳児でも使える。むしろ0歳児の成長は保護者が一番見たい部分だ。

「ずりばいで部屋の端まで進めるようになった子、つかまり立ちでニコッと笑う子。毎日少しずつ、できることが増えています。」

言葉が出なくても、動きの変化を書けば成長が伝わる。


コツ③ 子どもの「言葉」を引用する

子どもが実際に言った言葉をそのまま使う。これが最も読まれる冒頭文の形。

例:

「『先生、見て!ダンゴムシ!』——園庭でしゃがみ込む子どもたちの声が、毎日聞こえます。小さな虫一匹に大興奮する姿を見ていると、世界はまだまだ発見に満ちているんだなと感じます。」

例:

「『おかわり!』『もっと食べる!』——給食の時間が、一番にぎやかです。スプーンを握る手もずいぶんしっかりしてきました。」

例:

「『〇〇ちゃん、一緒にやろう』。お友達を遊びに誘う言葉が自然に出てくるようになりました。誰かと一緒に遊ぶ楽しさを、子どもたちは日々学んでいます。」

子どもの言葉は、保護者にとって「園での生の声」だ。「うちの子もこんなこと言うんだ」という発見がある。だから読まれる。

🐱 にゃーこ
「子どもの言葉をメモする習慣がなかった……。明日からポケットにメモ帳入れておこう」

その通り。おたよりが楽に書ける保育士は、日頃から「子どもの言葉メモ」を持っている。ポケットに入る小さなメモ帳を1冊用意して、面白い発言や印象的な場面をパッと書き留めておく。月末に見返すだけで、冒頭文のネタに困らなくなる。


季節別・書き出し文例集

実際に使える文例をまとめた。コピペでそのまま使ってもいいし、アレンジのたたき台にしてもいい。

4月

「新しい靴を履いて、少し緊張した顔で門をくぐる子どもたち。新年度が始まりました。泣いたり笑ったり忙しい毎日ですが、少しずつ園の生活に慣れていく姿を、一緒に見守っていきたいと思います。」

5月

「園庭の隅でアリの行列をじっと見つめる子、ダンゴムシを手のひらに乗せて『見て見て!』と駆け寄ってくる子。春の生き物に夢中な5月です。」

6月

「水たまりを見つけると目を輝かせる子どもたち。大人にとっては憂うつな雨も、子どもたちにとっては発見の季節です。」

7月

「『冷たい!』『気持ちいい!』——プール遊びが始まりました。水を怖がっていた子も、お友達の楽しそうな声につられて、少しずつ水に近づいています。」

8月

「セミの声に負けないくらい元気な子どもたち。汗をかきながら走り回る姿に、こちらが元気をもらっています。」

9月

「『先生、トンボ!』——空を見上げる子どもの指の先に、赤とんぼ。季節は確実に秋に向かっています。夏休み明け、ひと回り大きくなった子どもたちの成長に驚く毎日です。」

10月

「散歩の道にどんぐりを見つけると、ポケットがいっぱいになるまで拾い続ける子どもたち。『もう入らない!』と笑いながら見せてくれるポケットの中身は、秋の宝物です。」

11月

「園庭の木が赤や黄色に色づき始めました。落ち葉を集めて『花束!』と差し出してくれる子どもたちの感性に、毎日はっとさせられます。」

12月

「『サンタさん来るかな?』——そわそわしながら毎朝カレンダーを確認する子どもたち。12月はワクワクの月です。この1年の成長を振り返りながら、年末までの日々を大切に過ごしていきます。」

1月

「『あけましておめでとう!』と元気に挨拶してくれる子どもたち。お正月の思い出を嬉しそうに話してくれる姿に、冬休みが充実していたことが伝わってきます。」

2月

「鬼のお面を作りながら、『怖い顔にする!』『やさしい鬼にする!』と相談し合う子どもたち。節分に向けて、毎日がにぎやかです。」

3月

「この1年で、できることがたくさん増えました。一人で着替えられるようになったこと、お友達に『ありがとう』と言えるようになったこと、給食を残さず食べられるようになったこと。子どもたちの成長を間近で見られたことが、何よりの喜びです。」


おたよりが「楽に書ける」ようになる3つの習慣

最後に、冒頭文だけでなく、おたより作成全体を楽にするための習慣をまとめておく。

①「子どもの言葉メモ」を持ち歩く

ポケットに入る小さなメモ帳を1冊。面白い発言、印象的な場面を1日1〜2個書き留める。月末に見返せば、おたよりのネタが揃っている。

② まず口語で書き出す

いきなり「書き言葉」で書こうとすると止まる。まずは「友達に話すように」書いてみる。「先月ね、子どもたちがすごく成長したんだよ」——その口語を、書き言葉に直すだけ。

③ 冒頭文のストックを作る

この記事の文例をベースに、自分のクラスに合わせてアレンジしたものを12ヶ月分ストックしておく。毎月ゼロから考える必要がなくなる。

🐻 クマオ
「12ヶ月分のストック……一気に作るのは大変だけど、毎月1個ずつ貯めていけばいいのか。来月から始めてみよう」

そう、一気にやらなくていい。今月書いた冒頭文を「来年も使えるように」保存しておくだけで、1年後には12ヶ月分のストックができている。


まとめ

おたよりの冒頭文を変えるコツは3つ。

  1. 子どもの「動作」から入る — 映像が浮かぶ文に
  2. 子どもの「成長」を1つ入れる — 保護者が一番読みたい部分
  3. 子どもの「言葉」を引用する — 園での生の声が伝わる

「天気の話」をやめるだけで、おたよりは変わる。保護者にとっても、書く自分にとっても。