保育士の内定辞退マナー|電話・メールの例文と「困る」と言われた時の対処
転職活動をしていて、同時期に複数の園から内定をもらうことがある。
嬉しい。でも同時に、困る。
どちらか一つしか選べない。もう一方は、辞退の連絡を入れなければいけない。
内定辞退は、気まずい。でも、必ずやらなければいけない連絡でもある。
そして、やり方を間違えると、相手の園に迷惑がかかる。採用担当者の時間を奪う。次の候補者への連絡が遅れる。保育業界は意外と狭いから、後々自分にも影響する可能性がある。
この記事では、現役の保育士の私と、ビジネスマナーに詳しいベテラン先生と、新人時代に強引に引き留められた経験のある保育士Bさんの3人で、内定辞退の正しい伝え方を、電話・メールの例文つきで解説する。
内定辞退は「早いほど良い」理由
結論から書く。
内定辞退を決めたら、決めたその日か、遅くとも翌日までに連絡を入れる。
これは「早く伝えるのがマナー」という精神論ではない。現実的な理由がある。
保育士の転職市場は動きが早い。特に4月入職や10月入職のタイミングは、候補者も複数の園を並行して受けていることが多い。
あなたが「どうしようかな……」と1週間悩んでいる間に、次の候補者は他の園に内定承諾してしまう。結果、園は採用計画を組み直さなければいけなくなる。
辞退を決めた瞬間から、あなたは「園の採用活動を止めている側」になる。
これを理解すると、「早く連絡しなきゃ」と自然に思える。
メールだけで済ませるのはNG——まずは電話
「気まずいから、メールだけで済ませたい」——そう思う人は多い。
でも、内定辞退の第一報は、電話が基本だ。
理由は3つある。
①採用担当者がメールを確認するタイミングが読めない
園長や主任は、日中は保育現場に入っていることが多い。メールを確認するのは夕方以降、あるいは翌日になることもある。
その間、採用担当者は「この人、内定受諾するのかな」と思いながら、次の候補者への連絡を保留している。
②文面だけだと誤解される可能性がある
メールの文章は、どんなに丁寧に書いても、冷たく読まれてしまうことがある。特に「辞退」というネガティブな内容は、声のトーンで誠意を伝えた方が圧倒的に印象がいい。
③保育業界は狭い
園長同士は意外とつながっている。同じ区・同じ市の園だと、勉強会や研修で顔を合わせることもある。
「あの子、メール一通で内定辞退してきたんですよ」——こういう噂は、意外と回る。
電話での内定辞退|例文と会話フロー
では、実際の電話の流れを見ていく。
かける時間帯
平日の10時〜11時、または14時〜16時が基本。
保育園の時間帯を考えると——
- 朝(〜9時半):登園対応で忙しい
- 昼(12時〜13時半):子どもの昼食・午睡準備
- 夕方(16時半〜):降園対応で忙しい
この時間帯は避ける。園長や採用担当者が落ち着いて話せる時間に電話する。
電話の例文(フルバージョン)
以下、実際の会話をそのまま書く。
保育士:「お忙しいところ恐れ入ります。先日、内定のご連絡をいただきました〇〇と申します。園長の△△先生はいらっしゃいますでしょうか」
(園長につないでもらう)
保育士:「〇〇です。お忙しいところお時間いただき、ありがとうございます。先日は内定のご連絡をいただき、本当にありがとうございました。大変嬉しく思っております。
ただ、熟考を重ねた結果、誠に申し訳ございませんが、今回は内定を辞退させていただきたく、ご連絡いたしました。
選考の機会をいただき、面接でも貴重なお時間をいただいたにもかかわらず、このようなご連絡となり、本当に申し訳ございません。」
(園長の反応を待つ。理由を聞かれたら次項参照)
保育士:「△△先生には本当に親切にしていただき、感謝しております。〇〇保育園の今後のご発展を心よりお祈りしております。失礼いたします。」
ポイント
- 「辞退させていただきたく」は確定形で伝える。「悩んでいる」「迷っている」と言わない
- 謝罪は必ず入れる。ただし繰り返しすぎない(2回まで)
- 相手の話をさえぎらない。園長が何か言いたそうなら最後まで聞く
- 最後は「今後のご発展を」で締めると印象がいい
理由を詳しく言う必要はない
電話で辞退を伝えると、ほぼ確実にこう聞かれる。
「差し支えなければ、理由を教えていただけますか?」
この時、詳しく話す必要はない。
シンプルに、こう返す。
- 「他園からも内定をいただき、総合的に判断した結果、そちらに決めさせていただきました」
- 「勤務条件や通勤面などを総合的に検討した結果です」
これで十分。
「給料が低かった」「通勤が遠かった」「保育方針が合わなかった」——こういう本音は、伝えない。
相手の園にとってはショックな情報でしかないし、改善を提案されても、あなたはもう辞退すると決めている。お互いにとって無駄な時間になる。
「総合的に判断」——この一言で、全部まとめる。
メールでの内定辞退|例文
電話が基本だが、以下のケースではメールを使う。
- 電話が何度かけてもつながらない
- 園から「連絡はメールでお願いします」と指定されている
- 電話の後に、記録として文面でも残しておきたい
例文(電話後のフォローとして送る場合)
件名:内定辞退のご連絡/〇〇(氏名)
△△保育園
園長 □□様
お世話になっております。
先日、内定のご連絡をいただきました〇〇でございます。
先ほどはお電話にてお時間をいただき、誠にありがとうございました。
改めまして、この度は選考の機会をいただき、内定までいただきましたこと、
心より感謝申し上げます。
大変恐縮ではございますが、熟考の末、
今回は内定を辞退させていただきたく、ご連絡いたしました。
面接でお話しさせていただいた際の温かいお言葉、
そして園長先生のお人柄に触れ、大変魅力を感じておりました。
このようなご連絡となりましたこと、重ねてお詫び申し上げます。
本来であれば直接お伺いしてお伝えすべきところ、
メールでのご連絡となりますこと、何卒ご容赦ください。
末筆ながら、△△保育園の今後ますますのご発展を
心よりお祈り申し上げます。
〇〇(氏名)
電話:090-XXXX-XXXX
メール:XXXX@XXXX
例文(電話がつながらない場合の第一報)
件名:内定辞退のご連絡/〇〇(氏名)
△△保育園
採用ご担当者様
お世話になっております。
先日、内定のご連絡をいただきました〇〇でございます。
本来であればお電話にてお伝えすべきところ、
何度かお電話させていただきましたが、お忙しいタイミングかと存じます。
取り急ぎメールにて失礼いたしますが、
熟考の末、今回は内定を辞退させていただきたく、ご連絡いたしました。
選考の機会をいただいたにもかかわらず、
このようなご連絡となりましたこと、誠に申し訳ございません。
改めて、お電話にてご挨拶させていただければと存じます。
ご都合のよい時間帯をお知らせいただけますと幸いです。
何卒よろしくお願いいたします。
〇〇(氏名)
電話:090-XXXX-XXXX
「困る」「考え直して」と引き留められた時の対処
ここからが、この記事で一番伝えたい部分。
電話で辞退を伝えると、強く引き留められることがある。
- 「そう簡単に辞退されても困る」
- 「一度、直接会って話しませんか」
- 「うちの園、待遇改善も検討できますよ」
- 「もう入職の手配を進めてしまったので、今さら辞退は困ります」
結論から書く。
内定辞退に違約金は発生しない。
これは感情論ではなく、法律で明確に決まっている。
労働基準法 第16条(違約金・損害賠償の予定の禁止)
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
つまり——
雇用主(園)が「辞退するなら違約金」「損害賠償を請求する」と契約することは、法律で禁止されている。
もし園の就業規則や内定通知書に「内定辞退の場合は違約金〇万円」と書かれていたとしても、その条項は無効。払う必要はない。
民法627条でも保障されている
さらに、民法627条では——
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。
つまり、期間の定めのない雇用契約は、2週間前に申し出れば解約できる。
内定承諾書にサインした後であっても、入職日の2週間前までに辞退の申し出をすれば、法的に問題なく辞退できる。
入社承諾書を出した後でも辞退できる
「もう承諾書出しちゃったんです……」
これ、よく聞く相談。
承諾書を提出した後であっても——
- 民法627条により、2週間前に申し出れば辞退可能
- 労働基準法16条により、違約金は発生しない
もちろん、園側に迷惑をかけるのは事実なので、丁寧に、誠実に辞退の連絡をする。ただし、「承諾書にサインしたから辞退できない」と自分を追い詰める必要はない。
引き留められた時の返答例
園:「そう言われても困るんです。もうシフトにも組み込んでしまったので……」
あなた:「園の採用計画にご迷惑をおかけすること、本当に申し訳ございません。ただ、自分自身で熟考を重ねて決めた結論ですので、お気持ちは変わりません。このような結果となり、誠に申し訳ございません。」
園:「待遇改善も検討しますので、もう一度考え直していただけませんか」
あなた:「お気遣いいただき、ありがとうございます。ただ、給与条件だけの問題ではなく、総合的に判断した結果ですので、申し訳ございませんがお受けすることはできません。」
ポイントは、「検討します」と言わないこと。
「一度持ち帰って検討します」と言うと、相手は「まだ可能性がある」と思ってしまう。辞退の意思は、電話の最初から最後まで一貫して伝える。
辞退後の再応募は原則NG
最後に、意外と知られていない話。
一度内定辞退した園に、後日「やっぱりお願いします」は原則通じない。
園長の立場で考えると、当然の反応ではある。
採用計画を組み直した、他の候補者に連絡した、そうやって動いた後に「やっぱり」と言われても、もう席はない。
あるいは席があっても、「この子はまた辞退するんじゃないか」という目で見られる。
だから、内定辞退は本当に自分が納得した上で決める。「他の園の方がいいかも」と迷ったまま辞退するのは危険。
辞退連絡が気まずい……という人へ
ここまで読んで、「やっぱり辞退の電話、気が重い」と感じる人もいると思う。
電話のかけ方、文面、引き留められた時の対処——知識としては理解できても、実際に受話器を持つと手が震える。そういう保育士は本当に多い。
そんな時、一つ選択肢として知っておいてほしいのが、転職エージェント経由で転職する方法。
転職エージェント経由で応募した園については、辞退の連絡もエージェントが代わりに園に伝えてくれる。
- 気まずい電話をかけなくていい
- 引き留められても直接対応しなくていい
- 断り方の文面を考えなくていい
これ、精神的にかなり楽。
保育士向けの転職エージェントは複数あるが、その中でもレバウェル保育士

は、短期決着・スピード感のある転職に強い。複数園を並行して受けて、辞退連絡が発生するパターンでも、担当者がスムーズに間に入ってくれる。
もちろん、自分の力で電話・メールで辞退連絡ができるなら、それが一番。でも、辞退連絡の気まずさで転職をためらってしまうくらいなら、エージェント経由を検討する価値は十分ある。
まとめ
内定辞退のポイントを整理する。
タイミング
- 決めたら即日〜翌日までに連絡
- 遅れるほど園の採用活動を止める
連絡手段
- 第一報は電話が基本
- 電話が繋がらない場合はメール→後日電話フォロー
- メールだけで終わらせるのはNG
伝え方
- 「熟考の末、辞退させていただきたく」と確定形で
- 理由は「総合的に判断した結果」で十分
- 本音(給与・通勤・方針)は言わない
引き留められた時
- 労働基準法16条により違約金は発生しない
- 民法627条により承諾書提出後も2週間前に申し出れば辞退可能
- 「検討します」と言わず一貫して辞退の意思を伝える
その後
- 辞退した園への再応募は原則NG
- 保育業界は狭いので誠実な対応を心がける
転職は、新しい一歩。その一歩を気持ちよく踏み出すためにも、辞退すべき園には、丁寧に、早く、誠実に。
そこから、新しい保育士人生が始まる。
保育士の内定辞退マナーについてよくある質問
内定辞退の連絡はいつ入れるべきですか?
辞退を決めたその日か、遅くとも翌日までに連絡を入れるのが、基本マナーとなります。
あなたが悩んでいる間、園の採用活動は止まり、次の候補者への連絡が遅れます。保育士の転職市場は4月・10月入職タイミングで動きが早く、1日の遅れで採用計画に影響します。早く伝えるのが園への誠意です。
内定辞退はメールだけで済ませてもいいですか?
第一報は電話が基本で、メールはあくまで電話後の補足記録として送付する形が原則です。
メールは見落とされる可能性があり、採用担当者の確認タイミングが読めません。電話なら即時に伝わり質問にも応じられます。電話後すぐに「お電話のとおり辞退させていただきます」とメールも残すのが完全な型です。
辞退の電話で伝えるべき内容は?
謝罪・辞退決定・理由(簡潔に)・お詫びの順で1〜2分で伝えるのが基本の目安です。
「貴重なお時間を頂戴したのに大変申し訳ありません。家庭事情から熟考し他園にお世話になることに決めました。重ねてお詫び申し上げます」が型。理由は深掘りせず、感謝と謝罪を中心に短く済ませるのが大人の対応です。
「困る」と引き留められたらどう答えますか?
感謝を伝えつつ「決定事項なので変わりません」と毅然と繰り返すのが基本の正解です。
保育業界は狭く、強引な引き留めも稀にあります。「ご期待に添えず申し訳ありません。すでに決定していることですので、ご理解いただけますと幸いです」を3回繰り返せば、大半は収まります。態度は柔らかく内容は固く。
内定辞退で違約金を請求されることはありますか?
労働契約の原則として違約金は無効で、内定辞退に対する金銭請求に応じる義務はありません。
労働基準法第16条で労働契約の不履行による違約金は禁止されています。内定辞退で「研修費を払え」と請求されても、入職前の段階では原則として支払い義務はありません。脅された場合は労基署に相談してください。